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ここに来て抱きしめて  サイコパスな父親とその息子の戦いのドラマでした。

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ここに来て抱きしめて Come and Hug Me 全16話 (2018年 MBC/Netflix)

「検索ワードを記入してください」で、チャン・ギヨンssiに嵌り、彼目当てでこの作品を見始めましたが、彼の演技者としての資質を再確認できたし、ほんとうに魅力的な俳優さんですね。
彼の出演作「私のおじさん」「ゴー・バック夫婦」は、見ていないんです。「私のおじさん」「Kill it」は、とにかく暗いイメージのドラマですが、「ゴー・バック夫婦」「検索ワードを記入してください」は比較的明るいドラマ。「ここに来て抱きしめて」は、色々な表情で胸をキューンとさせてくれました。
この作品で初主演をつかんだチャン・ギヨンssiですが、このドラマの成功と、初主演作がこのように素敵な作品だったのは彼の資質や努力が認められたということですよね。
スジちゃんとナム・ジュヒョクくんが、オファーを始めは受けていたらしいですが、個人的にはこのお二人ではこの作品の機微や、シリアスさが演じきれないような気がしました。人気度で選べば、あり程度の視聴率を稼げるでしょうが、このドラマの本質は演技力がないと伝わらないと。

サイコパスの父を持つ警察官と被害者の娘、お互いが初恋である二人の男女が再会し、お互いの痛みと傷を抱いていく感性ロマンス
過去ある殺人事件でによって心に傷を負い、交差した運命を生きる事になった男女のストーリー。
このキャッチコピーを読む限り、とっても暗い感じのドラマなのだと。

このドラマは、サイコパスの父親からの偏愛の為に苦しんで生きてきた息子とその被害者でもある遺族の娘との12年の愛の結末を描いた作品です。そして父と息子の対決のドラマでもあります。

チャン・ギヨンssiの役柄は、サイコパスの息子ユン・ナム/チェ・ドジン、サイコパスの父親から自分に似ていると言われている息子です。
このドラマを見ていて改めてサイコパスとサイコパスは遺伝するのかというのが気になりますが詳しくは、最後に書き留めておきたいと思います

モンスターサイコパスの父親は、強い人間か?  その血を受け継ぐ息子が選んだ道は……

父親は、ドジン/ナムの狂気を引き出そうとナグォンの両親をも殺害しました。

ホ・ジュノ氏演ずる連続殺人犯の父親ユン・ヒジュ、不気味さと狂気さを感じさせたオーラはすごいですね。
知能的な悪役に適任な方で、サイコパスというイメージを与えられる俳優さんのお一人ですね。

初恋の相手の両親を殺してしまった父親、その初恋の相手さえも殺そうとした父親の記憶と罪悪感で苦しみながら生きなくてはならない息子の苦悩。
息子ナムは、たった一人で、被害者の方が自分よりもっと苦しいくて悲しいのだと思いながらこの12年間を贖罪しながら生きてきたのです。

ドジンは、自分の中に潜んでいる異常性を恐れながら生きていた。12年前にナムは父をナグォンを守るためにハンマーで殴った。この行動は、ヒジェと同じ異常性が潜んでいるのではないかと彼を苦しめた。愛する者を守るための正当防衛であった行動だったのに。モンスターな殺人者としてちっとも反省していない父親ヒジェ、そんな父親はモンスターサイコパスは、強者なのか。ナムは自分が軟弱だからナグォンの両親を守れなかったのか?ナムは「真の強い人間とは」

このドラマは、父と息子の壮絶な戦いのドラマでした。その息子ナムにとっての救いでもあり、その異常性から自分を支える唯一の存在は、ナグォンでした
父は、「悪とは自らを証明する者だと」言い、ナムの中に自分と同じ匂いを嗅いで喜ぶ人間でした。ナムは、その獣のような父親の血を受け継いでいることに恐怖を感じながら生きていました。12年前のあのナグォンの両親を殺害した事件から、彼の時計は止まったままでした。

ナグォン役のチン・ギジュさん、可愛らしくて笑顔がほんとうに美しくて、心が透き通っている女性で心を癒してくれました。

微妙で複雑な心の動きを演ずるチャン・ギヨンssiの表情がもの凄かった。

父親の血を感じさせる一瞬の狂気の表情。

自販機の広告のナグォンを見つめている時の寂しげな暗い顔。

ナグォンと再会後の彼女を見つめる少年のような無垢な瞳。

STORY……………………………..

演出:チェ・ジュンベ 「最高の恋人」「帝王の娘 スベクヒャン」
脚本:イ・アラム   「ドクター・イアン」

コウォン市という小さな町で、父と兄と継母とその娘ソジンと暮らすユン・ナム(子役時代ナム・ダルヒ)。
ユン・ナムが通う中学校へ転向してきた国民的女優の娘キル・ナグォン(子役時代リュ・ハンヒ)。
二人は互いに好意を抱くようになります。

ナムの継母オクヒは、夫ヒジェが犬舎での殺人現場を目撃してしまい、恐ろしくなり娘ソジンを連れて逃げてしまいます。

ところがある日、ナグォンの両親が、ナムの父親ヒジェに殺されてしまったのを見てしまったナムとナグォン。
ヒジェは、ナグォンも殺そうとします。それをどうにか止めることができたナムですが、また一つ大きな秘密を抱えてしまったのです。父親をハンマーで殴りつけて阻止できたからです。そしてナムは警察に通報して父親は捕まりました。
ヒジェは、出来の良い強い息子ナムが自慢でした。その息子を軟弱にして煩わせるもの、ナグォンとその家族を排除しようとしていたのです

父親は、連続殺人事件でも逮捕され、事件は解決しましたが、サイコパス殺人者の息子となったナムと、事件の後遺症でPTSDになってしまった被害者の娘のナグォンは、辛い人生を生きていくことになります。

月日は流れて9年後

二人は、それぞれ改名して、ナムは、チェ・ドジンとして刑事になり、ナグォンはハン・ジェイとして女優の道を目指して歩み始めていました。

ナムは、継母のオクヒに引き取られ島で、妹ソジンと共に暮らしていましたが、名を変えてもサイコパスの息子というレッテルは付いて回り、じっと我慢しながら「何としても生きなきゃ駄目」ナグォンの別れの言葉を心に秘めて頑張って生きていました。

ユン・ヒジェが獄中から手記を出版し、その本には、家族の暮らしのために役立てると書いてあった為に世間の人からまたもやパッシングの嵐を受けるドジン家族。
「贖罪と懺悔の記録」というタイトルの本を。

警察大学にいるドジンのところへ、偶然に、先輩女優にコーヒーカーの差し入れで訪れたナグォンは、過去を探る記者たちに問い詰めらて失神してしまったところをドジンに助けられます。
気が付いた時には、ドジンの姿はなく、綺麗に泥を落とした靴とドジンの上着だけが残されていました。そのドジンは、あの自叙伝を出版するのを手助けした記者からも追撃を受けていました。ナグォンは、あの人はナムだと確かめたかったけれど、会えずに…….

警察大学の卒業式には、記者や被害者家族が集まり騒然となりました。あの記者の記事のおかげで再びドジンがに注目が集まってしまったのです。
被害者家族のどうしようもない苦しみを、受け止めなくてはならない加害者家族の苦しみって、見ていて辛いです。卵を投げつけられたり、暴言を浴びせたり、被害者の人達の辛い気持ちのはけ口が、加害者の息子に何年も続けられるなんて………

誰かにとっての加害者になる」人間は生きている限りは。そう考えられない人間がサイコパス犯罪者に落ちていく。

それから3年後、女優として活躍するナグォンは、授賞式でPTSDを起こしてしまい病院に担ぎ込まれる。そこで通り魔事件を捜査していたドジンは刺されてしまい病院へ。そこで再び出会った二人。

ナグォンに、血まみれのハンマーが送りつけられる。その事件の捜査を担当することになるドジン。そのハンマーはドジンの腹違いの兄ユン・ヒョンムが送りつけたことになっているのですが、本当は違ったのですが。

ナグォンは「どうして私を訪ねて来ないの?あんなに必ずあなたから訪ねてきてと頼んだのに」と言われたドジンですが、彼は申し訳なさで一杯なのと、いつも彼女のポスターや自動販売機の彼女を見て心を落ち着かせていたのです。

兄のヒョンムは、父親に認められたくて、父親のようになりたくて?悪の道に入ってしまっています。本当は気が弱くて、弟の強さや父親に大事にされている事に嫉妬していたのです。反抗的に生きる事で自分の存在感をアピールしたかったのでしょう。「承認要求」されたい息子、ある意味、古臭い人間関係が好きな男ですね。

警戒中だったナグォンの家に侵入したヒョンムは、そこでドジンと格闘し、ドジンは、お腹を刺されてしまいます。

兄を思うドジンの気持ちと家族の愛でヒョンムは少しず変化していきますが、ヒョンム役のキム・ギョンナムssi、複雑な心の動きを上手く表現されていましたね。こういう脇役の方が渋い演技をされるのもドラマが光る理由ですよね。

継母オクヒ役のソ・ジョンソンさん、母親としての子供を愛する心と良心を、存分に見せてくれて、心が温かくなりました。娘を連れて逃げ出した母親、その事をヒジェは、「逃げずに通報していたら、ナグォンの家族を殺すことはなかった」なんて言って、彼女に罪悪感を植えつけてコントロールしようとします。が彼女は強い母親として子供に恥ずかしくないように生きることでその罪悪感から逃れたのでしょうね。でもあんな場面に遭遇したら……
彼女はなんかとっても心に残る演技をされる方ですが、こういう脇を支える俳優さんが素晴らしいのも韓ドラの醍醐味です。

もう一人のサイコパスから承認を受けたい男ヨム・ジホン、金持ちの息子でしたが、服役した過去があり、そこでヒジェから洗脳を受け彼を助けるための殺人をするのです。もう一人の協力者チャン・ユラ、ヒジェに傾倒する看護師、こうやってヒジェに心酔するサイコパスな人間の繋がりが出来ていくのって怖いです。でも全てナムの狂気を引き出すためだったとは…..

あの野心家で、嘘でもいいから特ダネを持って来いというパク・ヒヨン記者、ジホンに殺されてしまいますが、それはヒジェの嘘に気がついたからです。だからヒジェに殺されたのです。

その嘘とは?

ナム・ヒジェはモンスターなサイコパスではない。彼は弱い者を殺していただけの殺人者。12年前に16歳の息子に負けてしまってい事を彼女は探り出したのです。軟弱な人殺し恐怖によって人をひれ伏させているだけ。ただのモンスターとして忘れ去られる男だと。
14話からのエピソードも、ドジンとヒジェの最後の戦いのシーンが濃くて、こういうシーンってどういう心理で演技するのだろうと考えてしまいました。

息子をあくまでも取り戻そうとするヒジェ、狂気と良心の間を揺れ動きながら、懸命に父親に、人間になれない父親に今までの思いを話し続けるドジン。
あのホ・ジュノさんを相手に、引けを取らないチャン・ギヨンssiの演技。圧巻のシーンばかりでした。
そのドジンの警察官としての行動で、再びヒジェは逮捕された。

そのヒジェは裁判では、ジホンには臆病者と罵られ、裁判後、移送されるシーンでは、卵を投げつけられて呆然とするヒジェ、それを寄り添いながら見つめるドジン、オクヒ、ソジン親子。この戦いが全て終わったのです。

ドジンは、警部に昇進し、その任命式は、穏やかだった。

悪人の時間は永遠に止まったのです。

ナグォンの兄のムウォン

実の両親を惨殺されナグォンの両親に引き取られた養子なんですが、両親を殺された時に犯人を刺して生き残った男でした。
彼もまた、自分の内にある”異常性”を無視はできない人物として描かれていました。
彼のナムに対する態度は恋愛感情かとも思ったのですが、それは最後に残った最愛の家族であるナグォンを失うことに対する怖さだったと。

愛ある人との繋がりが、生きることの強さ、大切さを教えてくれると語ってくれるドラマです。オクヒ母親の愛情がドジン兄を救い、ナグォンと幸せになるように応援するオクヒです。その責任は私がとると。

ドジンとナグォンが、二人で破った壁、そして12年前の自分達を抱きしめる………

ナグォンの気持ちはあのおぞましい事件からも変わる事がなかった。彼女も被害者の娘として十分に苦しみ耐えて生きてきて強い人間になっていたのです。ヒジェにナグォンは、強い気持ちで「謝りなさい。全てを失った人に謝れ、私の兄に、両親に」ヒジェに一歩も譲りませんでした。二人は共に、止まってしまっていたあの12年前から立ち上がったのです。

ドジンは、「好きな時に自分を利用していい」なんてずっとナグォンに謝罪の気持ちでいましたが、会うだけで涙が出そうは人であり、あったらもっと涙が出そうなドジン。

彼女は「幸せになりたい」「好きだと」甘えるのです。

ドジンの癒しがナグォンであり、彼女の言葉が、彼の良心を、彼が違う世界に行けないように守っていたのです。

愛する者を守るための正当防衛だったとナグォンが言ってくれたこと。その言葉で、ドジンは、愛する者を守ることができるのが本当の強くて賢い人間だと確信したのです。

一度でも家族を守ってくれたことのない人は、そんなのは人間でもなく、父親でもないと気がつくドジン。

ナグォンは生命力のある強い女性として描かれました。常にドジンに降り注ぐ太陽のように。
その太陽を浴びてドジンは、ナムの木は、成長を始めたのです。

ナグォンは、初めて涙を流して母を恋しがった。ドジンの前では母を恋しがることが出来なかったのだが、その壁が破れた時、二人は未来に向かって歩き始められたのです。

止まっていた木、ナムは成長を始め、葉をいっぱい生い茂りそこは楽園、ナグォンのようになっていった。ナグォンは「楽園」という意味、ナムは「木」。
お前は大丈夫だ」と言ってくれる人間がドジンの周りにはいたことも、強い味方でしたよね。

  • サイコパスのモンスターな父親を持った家族の苦悩と加害者の家族という立場
  • 被害者の娘、初恋の相手に再会して、心踊りながらも、加害者の息子として接しなければならない男の悲しさ
  • このドラマに登場する人物は、みんな秘密を抱えて生きているのですが、その秘密を守るためにもがきながら懸命に生きている。
  • 人間には「良心」がある。その良心が人の心を動かし、それが人々に繋がっていくことの素晴らしさも感じさせてくれたドラマです。
  • 過去の自分たちを抱きしめる事で、過去から逃れるのではなく、再び愛し合う事で強い人間になったのです。悪は結局、自滅するのです。

この二人が12年後に再会して再び愛し合えたのは、「因縁ではなくて、救いだった」からと

でもソ・ジソブssiと目元が似ていますよね。
チャン・ギヨンssiの笑い顔が一番可愛いかも。

ドジンとナグォンの切ないロマンスで、どうにかドジンの人間性を信じることができたように感じる。あの狂気迫るモンスター父親とドジンの親子の戦いをどうにか冷静に視聴できたのです。あんなに息子ドジンを自慢する父親、そんなに息子を獣にしたかったのか。そのナグォンや彼を信じている世界の人達と、あの父親や兄との葛藤の中で冷静に生きてきたドジンは、強靭な精神の持ち主です。このドラマは、人を信ずる気持ち、愛が、人間の絆になるのだと感ずるドラマでした。

補足=記録として書き留めておきます。

サイコパス=異常犯罪者・猟奇殺人者と決めつけるドラマが多いですが、サイコパスって反社会性パーソナリティ障害、精神障害です。

サイコパスの主な症状として、感情の一部、特に他者への愛情や思いやりが欠如していることや、自己中心的である、道徳観念・倫理観・恐怖を感じないといったことが挙げられます。
サイコパスの原因は、脳の障害といった先天的なものと、幼少期の虐待といった後天的なものなど、複数考えられていますが、現状ははっきりとわかっていません。
サイコパスは、その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り、青年期または成人期早期に始まり、長期にわたり変わることなく、苦痛または障害を引き起こす肉体的体験および行動の持続的様式であるとアメリカの精神医学界では定義されているようです。

はっきりしていないようですね。

しかし、近年は、サイコパスは、社会的に高い評価を受けている職業に従事している人間が多いという指摘もありますね。1位は会社の最高責任者、2位は弁護士、3位は報道関係者、以下は、外科医、ジャーナリスト、警察官etc

「サイコパス」とは具体的にどんなパーソナリティーなのか。

・口達者で皮相的
・自己中心的でナルシスト
・良心の呵責かしゃくや罪悪感の欠如
・共感性の欠如
・感情が薄っぺらい
・異常なまでにウソをつくクセ
・衝動的な行動
・自分の行動をコントロールできない
・常に刺激を欲している
・責任感の欠如
・抵抗なく人を操る
・少年時代に犯罪歴がある

なんかこの一つも当てはまらない人間なんているのでしょうか?

異常犯罪者たちが「サイコパス」と呼ばれたのは、社会的な規範や常識といったものをまったく顧慮しなかったからで、「犯罪」(反社会性)に関するものさえ除けば、その人の強みにも弱みにもなるもののようです。

良心は、「自分の心の内面から聞こえる道徳的な声」などと言われることもあるが、精神科医のフロイトは、「良心」を社会が個人に対して強制するルールだと分析している。

 

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