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サイコだけど大丈夫 大人の童話の世界観が素晴らしい!

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サイコだけど大丈夫 It’s Okay to Not be Okay 全16話 2020年 Netflix

物語の前半は、残酷な童話の絵や、コ・ムニョンのインパクトのある衣装、セリフ、行動で度肝を抜かれました。疲弊したムン・ガンテの暗い表情も印象的でした。後半に向けて童話の絵の色合いも優しくなり、コ・ムニョンの表情も穏やかになり、ムン・サンテの目も輝き、温かい涙にあふれた眩しいほどのエンディングが待ち受けていました。

語られる童話の話とエピソードが重なり合い、映像美とOSTも半端なく美しくて圧倒されたドラマでした。色合いで感情を表現するドラマでもありましたね。

生きることに疲れ、ぶつかり合いながら生きてきたムン・ガンテ、ムン・サンテ、コ・ムニョン3人のキャラクターを演じたキム・スヒョン、オ・ジョンセ、ソ・イェジさん達の素晴らしい演技力と表現力、存在感に感動しました。

こんなに冷たく描かれているヒロイン、でもあの目のパッチリしたサイコ姫のアニメで心を奪われ、ドラマの中のムニョンには何の違和感もなく没入できました。このドラマが好きな理由は、サイコ姫の強く生きる姿に、共感できたからでしょう。スヒョンssiを眺め、サイコ姫の毒舌なセリフにスッキリさせていただいた時間でした。

◆ 韓国ドラマが、どうしてこんなにすごいのか?

それは演じる方の資質、「存在感」「演技力」「表現力」と「身体能力」、「風貌」が揃っている方が多いからだと思います。
そして、ハートを奪われる話題性のある作品は、「脚本」「演出」の神業級だから、そこに、俳優人の資質がプラスされて素晴らしい卓越した作品が出来上がるのだと感じています。

キム・スヒョンさんの逞しくなったお姿に惚れ直し、感情を抑えた演技や抑圧された感情を演ずる存在感に圧倒され、ソ・イェジさんのあのぶっ飛んだサイコ姫の世界に引き込まれ、オ・ジョンセさんの繊細でパワーのある演技に驚きました。


監督:パク・シヌ 「ボーイフレンド」「ジキルとハイド、私」
脚本:チョ・ヨヌ 「ジャグラス」

ドラマの概要

ムン・ガンテ(キム・スヒョン)は自閉スペクトラム障害を持つ兄ムン・サンテ(オ・ジョンセ)を母が亡くなってからは、一人で世話をして生きてきた。
母親は、兄サンテのことで精一杯だった。ガンテには「サンテの世話をさせるために産んだんだから」と言ってガンテを苦しめた。母親からの愛を望んでいたガンテ、兄の世話ばかりをさせる母を恨み、「ムン・ガンテは僕のものだ」と言って、母に訴えた。その母が亡くなってからは、生き抜くために、自分の感情を押さえ、世間との関係を断ち、逃げるように生きてきた。

兄を献身的に支えて生きているガンテは、いつも表情を顔に出さずにいつも大丈夫なように振る舞って生きていました。そのような彼を「あなたは偽善者」だと言うコ・ムニョンに再会し、ガンテは自分の傷に向き合い変化していきます。
童話作家コ・ムニョン(ソ・イェジ)は、愛を所有欲だと思って生きている。母親や父親の暗い過去を背負い、それに負けずに生きてきた美しい魔女です。
美しい魔女ムニョンは、ガンテが欲しくなり、猛アタックが開始されます。「可愛がって欲しいと思っているでしょう」とムニョンに言われたガンテ、心の中を見透かされて当惑します。そんな二人は、お互いに愛し合うようになるが、傷ついて育った物同士の愛は切なく、そして残酷でした。

兄サンテとガンテ、ガンテとムニョン、ムニョンとサンテと3人が、それぞれが大人になって寄り添って生きていこうとする、ヒューマンヒーリングドラマ。(スヒョンssiがこのドラマをこう言うジャンルだと言われていたので)


◆ チョ・ヨン脚本家のこの作品に対するコメントを読んだのですが、要約するとこんな感じ

“サイコだけど大丈夫”

愛してはいけない人を愛する勇気。
触れられたくない棘をかばい守ること。
許せない人間を許し、思いやりを注ぐこと。

ガンテはムニョンとサンテのおかげで強くなれた。
お互いを認め合い受け入れて抱きしめ合おう。
まずは、他人を認めて受け止めることから始めよう。

あなたは、あなたのままで構わない。
私は私のままで構わない。
違う外見をしていても大丈夫。
たとえ似ていたとしても大丈夫。

It’s Okay to Not Be Okay

 

そしてこの童話の絵を描かれているチャムサン氏が、「詩のように隠喩的な絵」にしたいと語られていました。

初めはこんな残酷童話をどうして書いたのか?なんて思ってしまいましたが、残酷だと決めつけている私の観念が問題だったようです。童話とは、善悪をはっきりさせ、善には幸せを、悪には怖い戒めを与えるのが童話だと思っていたからです。残酷イコール悪だから目を背けているのです。

◆ 大丈夫には全く見えない性格の3人の物語

ムン・ガンテ=キム・スヒョン

12歳で母を亡くし、7歳年上のサンテ兄さんと2人暮らし。精神病院の保護士や、いろいろなバイトをしながら生計を立ててきた。人間関係を極力排除した生活を兄と送るガンテ。その理由は兄の病気とトラウマとガンテ自身の抑圧された感情。幼い頃から母親の関心を受けることもなく、兄の面倒を見る事を母から頼まれ、普通の子供のように遊んだ記憶も、学生時代の思い出もないムン・ガンテ

ガンテにとって自分より兄サンテで、兄に向かう世間冷たい視線や、偏見に立ち向かいながら生きてきた。兄にも自分の感情を悟られないように、世間の人にも常に穏やかな表情を見せていたので、”ジョーカー”のような口元だと言われていた。母の愛を奪い、ガンテの人生をも奪った兄サンテ、でもその兄を大切に必死に守って生きているガンテの心は、矛盾に満ちていた。

そんなガンテが凍った池で溺れかけたのを助けてくれたのが、コ・ムニョンでした。ガンテはその瞬間のムニョンの顔をずっと忘れずにいた。そして淡い恋心を抱いていた。そのムニョンは、ガンテの花束を無残にも投げ捨てた。

コ・ムニョン=ソ・イェジ

 

コ・ムニョンは、推理小説家の母に完璧な作品のように育てられた少女でした。母親らしい愛の代わりに、母に言われたよう生きて来ることで、愛を欲しがったのでしたが、母は、人気小説の最終話を書き終えたのちに姿を消したのでした。

見た目は華やかで、有名な残酷童話作家に成長したコ・ムニョン、でも彼女は、「童話とは現実世界の残酷性と暴力性を逆説的に描いた残忍なファンタジーだ」と言い放つ。サイコパスと言うよりソシオパス的な性格の女性になっていた。彼女の所有欲は空腹感の裏返し。彼女のあの派手なファッションは、自己顕示欲ではなく、自己防衛、自らを守る鎧でした。

ムン・サンテ=オ・ジョンセ

そんなコ・ムニョンの絵本が大好きなガンテの兄サンテ、アニメの「赤ちゃん恐竜ドゥーリー」も大好きでした。残酷でダークな童話の世界と明るい子供向けアニメの世界が大好きなサンテ兄さん。母親が殺された事件を目撃したサンテは、そのトラウマ、蝶のブローチが頭から離れずに、蝶の舞う季節になるとパニック症状を起こした。そのためにガンテは逃げるように転々としてた落ち着かない人生を送っていた。

 

◆ ドラマのタイトルには、世界の有名な童話や物語、それらをなぞらえたタイトル、ムニョンの絵本のタイトルが使われていて、3人を囲む人間達の生き様や、トラウマの原因を解き明かすキーポイントになっている。

◆ 母親の存在が彼らを闇に閉じ込めてしまった

ガンテは母親に兄のように愛されたい無性の愛が欲しかったのに、兄の保護者として生きるしかなく、自分の世界がなかった、作れなかったのです。母親が彼を身動きできない状況にしてしまっていたのです。

ムニョンも同じです。母親に丹精に作られた作品として生きることが彼女の宿命だったような。城に閉じ込められた王女を助けにくる王子は、母に殺されてしまう」と言う呪縛と抑圧が繰り返されていたのです。ムニョンは、そんな母に服従させられて、固まってしまっていたのです。

ガンテも、「兄さんが僕の人生の全てだから」と言ってムニョンから離れたいないくせに逃げようとします。どちらも母親の抑圧から逃れられないのですが、ムニョンは、呪われた城で、母親と対峙して、ガンテ、サンテと共に生き抜こうとします。ムニョンは逃げないのです。

長い髪の毛も、母の作品。その髪の毛を切った時、彼女は母親から開放されたのです。

ガンテは、母が一人で二人の兄弟を育てることの大変さをスンドクに諭され、母の辛さを今のガンテなら理解することができた。ムニョンとの出会いで、彼は自分の感情を抑えることができなくなり、それが彼の心の扉を開かせたのでしょう。

ムニョンは、母からも父からも愛は最後まで得られなかった。反対に二人は、彼女を殺そうさえした。一番不幸なのはムニョンだったような気がする。でも一番強かったのはムニョン。

 

◆ カンテとムニョンが立って、向き合う姿……..心の闇を抱えて生きる二人、自ら重なり合う対称性のように

ムニョンの心の闇、そしてそれを乗り越えて生きてきたムニョンの強さと反対にガンテは、その痛み辛さから逃げ、「兄を守っている」のだという信念で、本当の気持ちを隠して生きてきた。それをムニョンに見破られる。過去の痛みに打ち勝つことができなければ、幸せは掴み取れない。幸せは、痛みや辛かった記憶を胸の片隅に秘めて生きていくものに与えられる。傷に真正面から向き合わない者は、偽善者であり、臆病者なのだ。と。でもそんなガンテを手に入れたくなったムニョンは、執着心を丸出しにして迫ります。

ガンテの存在が自分の「安全ピン」になると気付いたムニョンは、ガンテを繋ぎ止める為に、サンテ兄さんを挿絵作家として雇うのでした。彼女の孤独を知るガンテは、突き放せなかった。

体が苦しい時は涙が出るけれど、心は嘘つきなので苦しくても黙っている。でも寝る時になるとクーンクーンと犬の鳴き声を出して寝るんだよ。サンテ兄さんがガンテの具合悪い時の状態をこんな言葉で言ったのが印象的です。同じようにムニョンも幻想で苦しめられて号泣している姿をみてガンテは心が苦しくなりマンテ人形を魔除としてムニョンに渡します。一緒に生活するうちに、お互いの存在が必要になり、いろいろなことに気がつき、掛け替えのない存在になっていく3人。

ガンテは、ムニョンとの出会いで、今まで頑なに閉じていた安全ピンを外されて、やっと感情を表に出せるようになった。

ムニョンは、ガンテの出会いで、愛は所有欲ではないことを知り、本当の愛に気が付く

ガンテとムニョンが遊びに行ったことでサンテ兄さんは腹を立て、「お前は私のものなのに、なぜ嘘をついたのか」と絶叫しながら、暴れました。それを見守る茫然自失のガンテ。サンテ兄さんは、過去の記憶をはっきり覚えていました。そして弟を罵ったのです。サンテ兄さんの所有欲の破壊力を目の当たりにしたムニョンは、悟るのです。自分のものにすることが「愛」ではないと。

「みにくいアヒルの子」の童話をガンテはサンテにこう伝えました。……白鳥を育てたアヒルの母について、「アヒル達に虐められた白鳥も、大人がいたら家族から離れなかったはず」つまり、悪いのは、虐めたアヒルではなく、それを傍観していたアヒルの母親だと。サンテ兄さんも病気のせいもあるのでしょうが、ガンテに執着して、ムニョンをなかなか家族として、受け入れなかった。ガンテの「赤ちゃん恐竜ドゥーリー」のストーリーで彼を説得し続けます。でも弟ガンテの寝顔を見て「幸せ」な顔しているのに気が付く。そしてムニョンを家族として受け入れるのです。それからのサンテの成長ぶりはすごかった。

 

僕には君が必要だ。僕は兄さんのそばにいる。君は僕のそばにいてくれ。とムニョンに伝えるガンテ。素直になりましたね。

やっと「家族写真があれば家族」と言う新しい基準で家族になった3人の写真

やっと家族として仲良く生活始めたのに、衝撃的な現実が…….ガンテ・サンテの母親を殺した犯人が、ムニョンの母親だと。亡くなる前にムニョンの父が、真実を話したのです。そして父親として傍観者であったと。

ガンテは、母親の真実を知っても、家族写真を撮る場所に出掛けた。決意を持って……「僕は誰かを守るのにうんざりしていた、使命ではなく僕の人生の目標にしようかと.。 誰にも僕の家族には触れさせない。 僕が最後まで守り通す。 必ず ! 」

「僕たちはあまりにも孤独な兄弟だった。 これからは人と関わって生きたい。 コムニョンは僕が知る最も孤独な人だから。」…….あんなサイコな母と父の間で生きてきたムニョン、痛いほど彼女の気持ちがわかるガンテ。

本当の家族ではない家族でも家族になれる、「赤ちゃん恐竜ドゥーリー」の世界観ですね。この世界観がこのドラマを温かい涙でいっぱいのエンディングにつながったのです。

でもあの蝶が、壁面に描かれていました。サンテ兄さんを苦しめてきた蝶が。

ムニョンの母親の正体が明かされ、その人は看護師長だったのです。ムニョンは全てを知り、ガンテやサンテに嗚咽しながら詫びるシーン、心が痛くなりますが、ムニョンは変わらない。前を見据えています。どうしたらガンテやサンテが楽に生きていけるかと。自分から離れて生きるのが一番だと考え、「消えて」と。ムニョンらしい選択でしたが、一度決めたガンテの決心は揺るぎません。ムニョンを絶対に一人にはしないと。

君と母親は違う。 僕は死んでも君から離れない。僕にとっての君は、子供の頃から好きなコ・ムニョンなんだ。

城で眠らされた王子を救い出すために王女が城に駆けつけ、その王女を攻撃する魔女を、サンテが本で倒すと言う結末が。

 

ガンテもムニョンもサンテもみんな泣いた。泣いて泣いてお互いが必要だと感じて歩み寄っていく。

ムニョン母に注射され眠り続ける王子を、王女がキスで目覚めさせるのではなく、王子が目を覚まし濃厚なキスシーンに….やっと二人は恋人同士に。長い道のりでした。長かったけれど、いろいろな問題を解決しながら二人がやっと自然に歩み寄れた結果ですね。ガンテの堅固な気持ちは簡単には緩まない。

愛を知らなかったムニョンが”愛を告白”し、純粋に旅行がしたかったガンテが”気ままな旅”を手に入れ、蝶トラウマを克服したサンテが”必要な人”になる。お金があるならば、1年でも2年でものんびり気ままな生活を楽しむのを応援します。大学に行きたいガンテですが、生涯学習だと思って取り組んだ方がいいですよね。人生長いから。。。。

ムン・ガンテ、ムン・サンテ、コ・ムニョンは、守ってくれる大人のいない「みにくいアヒルの子」でしたが、3人で傷と寂しさを分かち合って生きていくのです。

「自我を失った少年」ムン・ガンテ「感情のない空き缶姫」コ・ムニョン「箱に閉じ込められているおじさん」ムン・サンテが、新しい旅立ちです。憧れのキャンピングカーに乗って3人は旅立ち、楽しさを満喫し、ムン・サンテは「必要は人」になって新たに一人で動き出した。ガンテとムニョンの旅の果てはどうなるのか?

◆  人は皮膚から癒される……コミュニケーションする皮膚

触る感覚は感情に直結している。温かい感触の記憶、手で触れ合うことで、癒されていくのです。

小さい頃の触れ合いが人間関係の基礎を作る、ガンテは母の温かみを思い出して前に向かって歩き始めた。ジュリ母、スンドクさんにも。でもそう言う思い出のないムニョンが反社会的性格的な人間になってしまったのもあまりに酷すぎる。そんなムニョンをガンテがサンテが温めてあげて欲しい。

手で触れて、スキンシップしてガンテもムニョンもサンテも癒されていくのです。自閉症の人はスキンシップを嫌がりますが、ムニョンと。サンテが3人で肩を組むなんて。

ガンテが、心の扉がオープンしてから、男としての欲情からか、癒されたいのかムニョンにくっ付きたがっていました。でもムニョンは最初からスキンシップしまくっていましたが。

素晴らしいキャスティングで、胸にグッときて苦しくなるようなドラマでした。でもものすごく楽しい時間でした。

そんな3人を見守る心温かな人々、スンドクお母さんは本当に素晴らしいサポートとアドバイスをしてくれた。このお母さんのお陰で、3人は道に迷わなかった。素晴らしい指導者です。オ病院長が代わりに病院長をやってくれと言ってましたが、その資質ありです。でも家庭料理のような温かさで包み込むお母さんですから、どこか身近にいて欲しいお母さんですね。

娘のジュリも、ガンテにはふられたけれど、いい人だから幸せになってほしい。やはり素晴らしい母親の元では、しっかりした娘が育つのでしょうか。

サンサンイサン代表、なんかチャラい男かとも思っていましたが、ムニョンをしっかりと守っている男でもありました。ジュリと幸せになるんでしょうね。

親友のジェスは、サンテと仲良くなるのに10年かかってもガンテのそばで、じっと見守り、ガンテの辛い時には側にいて慰めて、時には兄らしいアドバイスもしていました。サンテもそうだったけれど、ジェスもガンテをムニョンに取られるのを警戒していましたね。ガンテは人気ありすぎです。

そんな暖かい人たちに見守られて、3人はもっと新たな旅立ちに出ました。

クークーと泣きながらも、マンテ人形に支えられ、ガンテとサンテ兄さんに愛され、ガンテ兄弟の周りにいる温かい人にも支えられ、ムニョンは明るく強く生きていくのでしょう。

このドラマを見て

ああ幸せでした💞

 

本当の顔を探して

むかしむかし、深い森の奥の城に陰の魔女に本当の顔を奪われた3人が一緒にくらしてました。 口角があがった仮面をつけた少年と音がうるさく響く空き缶姫と箱をかぶったおじさんがいました。
箱おじさんが言いました。 3人で仲良く暮らす為に奪われた顔を取り戻そう。」
顔を見つけるために、キャンピングカーに乗って旅に出た3人は、雪原に座り込んで泣いている母キツネに出会いました。

仮面の少年が母キツネに尋ねました。 おばさん、なぜないてるんですか?
雪原で餌を探していた時に、おぶっていた子供がいなくなってしなったの。
涙が枯れてしまうほど泣いたは母ギツネ見て仮面少年の目から熱い涙が溢れました。
すると雪が溶け始め、中からカチカチに凍った子ギツネが現れました。

再び旅に出た3人は、いばらの園で裸でおどるピエロに出会いました。 空き缶姫が尋ねました。 棘が刺さっているのになぜ踊り続けるの?するとピエロは答えました。 みんなに見てもらいたかったんだ。 だけど痛いだけで、誰も見てくれない。 すると空き缶姫はいばらの園へ入り、ピエロと一緒に踊り始めました。 私は空缶なので、トゲが刺さらないの。 空缶姫が飛び跳ねながら踊ると、空っぽの体かあらカラカラ….カラカラと音が鳴ったのでした。 その音を聞いて集まった人々は、2人のダンスを見て拍手を送りました。

その時、奪われた顔を取り戻そうと再び旅に出た3人の前に、邪悪な影の魔女が現れましたた。魔女は、母キツネの代わりに泣いた仮面少年と、ピエロと踊った空き缶姫をさらっていきました。
これでお前たちは、二度と幸せな顔を見つけられない。

魔女は呪いをかけ、モグラの穴に閉じ込めました。数日後、箱おじさんが穴を見つけましたが、入り口が小さくて中に入れませんでした。
「どうしよう。モグラの穴に入るには、箱をとらなきゃいけない。」
その時穴の中から仮面少年の声が聞こえました。「おじさん、気にせず遠くへ逃げて。魔女が戻ってくる。」

箱おじさんは勇気を振り絞りました。かぶっていた箱を投げ捨てて穴に入り、仮面少年と空き缶姫を助けました。
明るい場所に出た2人は、箱を取ったおじさんの汚れた顔を見て笑いました。声を出して笑いました。ケラケラ…ケラケラと。笑っていた仮面少年の仮面がポトッと落ちました。空き缶姫の空き缶もカーンと鳴って落ちました。

本当の顔が現れた2人を見ておじさんが言いました。「ああ、幸せだ」

影の魔女が奪ったものは3人の本当の顔ではなく幸せを探そうとする勇気でした。

 

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