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未成年裁判  感想、そして………

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未成年裁判、「青少年犯罪を憎んでいる」とはっきりと口に出す判事シム・ウンソクを主人公に描く法のあり方、社会への課題を冷静に残酷に問いかける骨太ヒューマンドラマ。青少年犯罪者と少年刑事合意部の裁判官達の物語です。

この少年刑事合意部というのは、このドラマのために仮想に設定された部署で、実際韓国では家庭裁判所、各地方裁判所に少年部という部署があり、その部署で一人の裁判官が裁判長になって子供達の処分を決めている。ドラマでは少年の保護事件と少年刑事事件の両方を扱う設定になっていますが、現実には少年保護事件と、満14歳以上の重大事件を扱う少年刑事事件は、別の部署で審理が行われるそうです。同じ年齢の未成年でも、更生を目的とした判決にすべきものと、重大な処罰を下すべきものが両方存在するという観点から、脚本家が、現場の判事たちのアドバイスで作り上げた部署です。
ドラマの中ではシム判事が直接犯人を探したり捜査している場面が出てきますが、現実は調査官が調査を行い、こんな危ないことはしないようです。

視聴後の感想

ドラマの初めに「少年法の廃止を求めます」という映像が流れ、そしてキム・ヘスが演じるシム・ウンスク判事の「私は非行少年を憎みます」という鋭い視線と言葉にドキッとしました。そんな感情的な言葉を判事が口にするドラマって…….?

判事の中でも際立った経歴を持つ主人公シム判事が、なぜ出世コースでもない少年刑事合議部に来たのか、その謎が、このドラマを見終わると判ります。なぜに非行少年を憎悪するのかも…….彼女の判事としての信念と人間としての感情のバランスの危うさをドキドキしながら視聴しましたが、キム・ヘスさんの演技力に没入してしまった。

このドラマのモチーフになった犯罪事件の多くは、韓国内で実際にあった事件だったそうです。どの事件も悲惨さと若者ゆえの残虐性を見せつけられましたが、その描き方は、その残虐性、暴力性を強調するのではなく、「何故にこのような事件を少年たちが起こしてしまうのか」ということを考えさせられるような作品になっていました。

◉ Ep1〜2:仁川小学生誘拐殺人事件(2017年)
◉ Ep6〜7:淑明女子高試験紙流出事件(2018年)
◉ Ep7〜8:大田中学生レンタカー窃盗・追突事故(2020年)
◉ Ep9〜10:仁川女子学生集団性的暴行事件(2019年)
◉ Ep9〜10:龍仁アパートレンガ死亡事故(2015年)

韓国ドラマでメッセージ性の強いドラマは、このドラマもそうでしたが、まずはこういう状況に置かれてしまった少年たちがいることを伝え、それをどうしたら解決できるのだろうかと問いかけ続けていくのが使命であるというような制作側の意図を、痛烈に感じます。そして丁寧にフィクションとしての正確性を確立させたドラマとして描き出す事に時間と情熱をかけた結果だったと伝えているように感じました。

そして加害者、被害者、判事、大人、彼らを取り巻く人間、多方面からの多様な視点から描かれているところがこのドラマの秀逸で飛び抜けたポイントだったと思う。だから心に突き刺さるメッセージ性の強いドラマになったのだと感じたのです。犯罪を犯した青少年の家庭、被害者の家庭は、事件によってどれだけの波紋が広がり、どれだけの人が苦しむのか。その青少年と向き合う裁判官達は、それぞれの信念と観点から判決を下す。

少年法、未成年犯罪について韓国ドラマという枠の中を飛び出し、どの国でも通じる社会の無情さを突きつけた作品だったと思う。

演出:ホン・ジョンチャン 「ディア・マイ・フレンズ」「ライフ」「ドクター異邦人」
脚本:キム・ミンソク この作品がデビュー作品
Netflexオリジナル Juvenile Justice 10話

今日のNetflixの日本のtop10を見ると、このドラマがトップ1でした。こんなシリアスな韓ドラが日本のランキングのトップ1とは……

今見ていたドラマよりも、魅入ってしまった。
難しいテーマを描き切った脚本、演出、俳優陣全てに、圧倒されてしまった。現実で起きた少年犯罪をモチーフにして、報道では伝えきれない少年審判の現実、矛盾にリアルに迫り問題提起するドラマ制作ができる韓国ドラマのパワーに、感銘すら覚えてしまった。邦題では「裁判」になっていますが、原題は「審判」で、判事達の葛藤を描いた作品です。

コメディ要素なし、ロマンス無し、かっこいい俳優もいない、ただただ重い少年犯罪が描かれているのに、見ているものを掴み、離さないこの作品、非常に生々しくて人間臭いこの作品…..ネトフリ日本でトップになるとは。

ゾンビドラマのリアリティーよりも、こちらの方がもっと怖くて恐ろしい。リアルに茶化さずに、分かりやすく人を引き付けるパワーを振りまきながら10話というエンタテイメントに仕上げるなんて…….掘り下げた脚本と役者さんたちの幅のある演技力に脱帽です。

少年を守るための法律「少年法」、でもこんなに残虐な少年達を守るのか?
虐待からの逃避だとしても守るのか?

自分を痛めつけて、その痛みを家族に感じて欲しくて、自分の辛い思いに気づいてほしくて…..非行の大半は家庭問題だと伝えていますが、そう思う反面、そういう家庭しか作れない、そういう家庭になってしまった中で生き抜かなければならない親の子もいるのが現実です。一つ一つ正していくしかないもどかしさと現実は待ってくれない厳しさで途方に暮れてしまう。

一つ一つのエピソードが、言葉が重く胸に突き刺さる。

◉ 寛大な判決で少年少女の未来を閉さないことが、更生への道なのか?
◉ 未成年の犯罪とは言え、本当に守るべきは誰なのか。
◉ 形ばかりの裁判が、反省の機会を奪っていないか。
◉ 大人はそういう彼らが生きる世界を変えることができるのか。
◉ 社会への痛烈なメッセージに身体が震えた。

一人の子供を育てるには、一つの村が必要。少年事件は結果ではなく始まり。加害者にこそカウンセリンが必要。子供を傷つける親が、大人が、子供に人を傷つけてはいけないと教えられるはずがない。

周りの環境なくして更生などできない。「非行少年」という存在が伝える法の恐ろしさ、無力さ、犯罪というものは一体なんなのかを痛感させられた。

実力派キャストの凄さ

判事として加害者と被害者の両方から、事件を冷静に審判し、複雑に絡み合う問題に真摯に向き合う姿が怖くすら感じた。

シム・ウンスク判事(キム・ヘス)


冷静沈着に少年犯に罪の重さを知らせるために断固たる処分を下す判事
非行少年を嫌悪して彼らの更生を信じていない。
判事の中でも際立った経歴を持つシム判事が、なぜ出世コースでもない少年刑事合議部に来たのか….

チャ・テジュ判事(キム・ムヨル)


少年達のために真摯な態度で常に温厚に接する判事。
高卒認定試験から判事にまでなった苦労人で、少年たちが反省をしてより良い未来が生きれるように助けたいと考える判事。

カン・ウォンジュン部長判事(イ・ソンミン)


少年法の法改正が必要だと考える判事。
メディア出演にも積極的で、政界進出を狙っているため、物事を波風立てず無難に処理しようとする傾向が強い。

ナ・グニ部長判事(イ・ジョンウン)


少年事件は、スピードが勝負という信念の判事。


判事たちのそれぞれのエピソードも挿入し、彼らの人間的な成長をもしっかり見せつけるあたりも凄かった。判事たちの己の信念も問われる人間ドラマになっていた。部長判事の二人の生き様も凄かった。この二人の部長判事は、シム判事の足を引っ張ることはなかった。信念の違い、生き様の違いはあったが、青少年犯罪に対して精一杯戦ってきたと思う。でもカン部長判事の妻が息子の為に不正をやってしまったが、その責任の取り方が、あっぱれだった。

私たちが直面している現代社会の時代像を盛り込むことができる作品に出演できて俳優として嬉しかった」とイ・ジョンウンさんが話されたようですが、俳優陣の熱意と気迫に満ちた作品でした。

青少年犯罪を放任する社会、子供たちをみつめる大人たちの役割を改めて考えさせられるドラマ。

韓国の司法制度や社会情勢は、日本とは違う面も多々あると思いますが、非行少年の更生というテーマには普遍性があり、ネット社会になり、どんどんその犯罪の内容が巧妙になって、大人の犯罪と変わらなくなっていっています。そんな現代ですから、この作品のメッセージは重く響きます。

Netflix × 韓国ドラマの凄さを証明する作品が、また一つ増えました。




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