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あなたに似た人

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あなたに似た人 Reflection of You

なんとも言えない暗くて深い闇を感じるドラマでした。その中で唯一明るかったのは、ヒジュが描いた絵だけだった。
油絵を用いたオープニングから始まり、赤、緑、黄、黒の色のイメージを視覚的にも、心情的にもアーティスティックに表現した作品でした。
悲しいドラマのように見えるが、悲しいのではなく虚しさが色濃く描かれたドラマだったと思う。悲しみよりもっとドロドロした深く澱んだ人間の生き様が描かれていた。原作を読んでみたくなりました。
OSTも気怠く、アンニュイな感じ、大人のドラマですね。

ドラマの概要………

演出:イム・ヒョヌク 「ライフ」「コッパダン〜恋する仲人」
脚本:ユ・ボラ 「秘密」「ただ愛する仲」
制作:jtbcスタジオ・Celltrionエンターティメント
放送局:JTBC 2021年 16話 Netflix
原作小説:チョン・ソヒョン「あなたに似た人」

大学理事の長男の妻であり、画家としても成功しているヒジュ(コ・ヒョンジョン)の娘が、臨時教師のヘウォン(シン・ヒョンビン)に耳の鼓膜が破れるほどの体罰を受けた。それがきっかけとなり、ヒジュとヘウォンは再び出会ってしまった。順風満帆そうに見える彼女の前に現れたへウォン。この事件は、ヘウォンがヒジュに復讐のための序章に過ぎなかった。そしてヘウォンは、彼女や、彼女の夫に近づき、執拗に追い回した。

主なキャスト………
チョン・ヒジュ|コ・ヒョンジョン

テリム学校法人のアン・ヒョンソンの妻で、有名な画家であり、人気エッセイ作家でもある。看護助士として働いていたテリム病院で、ヒョンソンと出会う。弟や母親を養いながら懸命に働く強い女性でした。前向きに「今」を生きる女性で、結婚後は、恵まれた環境の中で、幸せ暮らしていたが、娘の留学によって人生が陰り始めた。

彼女は留学という形で、アイルランドにいたようです。そこにウジェが現れ、息子が生まれてまるで家族のように暮らしていた。そんな逃避行のような関係には終わりが来る。ヒジュは、息子ホスを連れて彼の前から立ち去った。夫の側で、人気のある画家、エッセイ作家として輝いている生活を送っていた。

50歳とは思えない透明感のあるう美しさで登場されました。今までのポッチャリした気の強い女性というイメージではなく、潤いに満ちた、財閥の奥様という上品なイメージがとても素敵でした。身体もだいぶ絞られたようですが、ガスガスではない素敵な痩せ方で、流石に一流の女優さんでした。セリフの話し方もゆっくり気持ちをセーブして話されるのが良かった。あのピラティスのシーン、素晴らしい柔軟性のあるお身体で、きっと長く続けていられたのでしょう。あのパフォーマンスは上級者しかできませんから。

ク・ヘウォン|シン・ヒョンビン

「ミミー狂った美術教師」というニックネームで呼ばれるテリム女子中学校の臨時美術教師
ヒジュとの出会いで、彼女の人生は狂ってしまった。

妙に意味深な言葉と、反抗的な態度と目つきでヒジュに付き纏う女ヘウォン。かつてヒジュに「絵画」の手ほどきをしてくれたハンナだった。
ヘウォンの大事な人、夫になったウジェとヒジュは、不倫の関係だった。そしてヒジュを追いかけるように消えてしまったウジェ。そんな二人を彼女は許せずに、自分が苦しんだように彼らを苦しめようと再びヒジュの前に現れたのです。

「賢い医師生活」のギョウルとは、あまりにかけ離れた役柄でびっくりでした。こんなにネガティブな役をやっていると、お身体の調子悪くならないでしょうか。ヒジュを破滅させるために、手段を選ばずに復讐をやり遂げようと周りを巻き込んで行く姿が、あまりに無残で、見ていて辛かった。ここまで追い込められてしまった彼女、ウジェへの未練からここまでくると魔女という怪物に見えました。

ソ・ウジェ|キム・ジェヨン

ヒジュを破滅させることができる男。

ヘウォンの美大の先輩で、彫刻家。父親は天才彫刻家で、あのアトリエは父親のものだった。暗い影を漂わせ、あの容姿で彫刻家としてのオーラを漂わせていたが、行動は荒くて無謀な男でした。
ヘウォンと付き合いながらも、ヒジュの絵の個人教師になり、そしてヒジュに興味を持つ。

アイルランドに取り残されて、ヒジュの夫の行動によって交通事故として病院に入院させられ、そして記憶喪失にもなっていた。そんな彼を探し出して韓国に連れ戻したヘウォンでしたが、とうのウジェは記憶を失っているので、ヒジュを見てもわからなかった。でもヘウォンの企みで、ヒジュとの会う時間が増えてくると自分の過去が気になり始める。そして記憶が戻った時に、昔のような性急さでヒジュに迫り狂気的な性格をあらわにしてしまった。

でも、「捨てられた」ですよねウジェは。そりゃー、ヒジュを恨みますよ。そして幸せな彼女の姿を見たら、彼女に詰め寄るのは当たり前です。ヒジュは彼の狂気的な部分が分かっていたから、逃げたのでしょうが、こういう男に惚れられたら、人生が破滅しそう。

でも可愛そうで不憫な男でもあった。30年生きてきて、一番幸せだった時間が、ヒジュと暮らした3年間だったなんて….実から出た錆とは言え、二人の女性に捨てられ、無残な最後を迎えてしまったんですから…..

「俺の物にならないなら誰にも渡さない」そう言いながら、ヒジュの首を絞めようとするウジェ。愛ではなくて執着です。「愛している。これからも一緒だ」……..と言って死んでしまったウジェ、そうずっとヒジェの側に、亡霊としているのでしょう。

アン・ヒョンソン|チェ・ウォニョン

ヒジュの夫。テリム学校法人の代表取締役

テリム財団の理事であり、世間的には恵まれた男でしたが、あの権力を振り回す理事長でもある母親に逆らえなかった。ヒジュとの結婚でやっと人間的な明るい家庭を築き始めたと思ったのに、まさかの妻の不倫。そしてその相手ウジェを車で引き殺そうとしてしまうが、ウジェは死ななかった。多分、自分の罪を隠し通すために、記憶喪失になったウジェを3年間、アイルランドの病院に監禁してしまっていた。その事を隠しながら平穏な日々を暮らしていたのだ。どうして不倫までした妻、息子のDNA鑑定までしていたのに、ヒジュに執着していたのだろうか。やはりヒジュを愛していたのか?

赤・緑・黒が暗示するのは………..

光の色の三原色は、「赤、緑、青」で、3色を混ぜ合わせるとあらゆる色が出来るが、絵具は、元々不純物が混じっているので、混ぜれば混ぜるほど濁った色に変化していく。
黄色に青っぽい黒を混ぜると緑色に見える。
ヘウォンは、ヒジュと出会った頃は黄色が好きな女性でした。それがヒジュからもらった緑色のコートを来て現れた。
ダークな黒は、ウジェのイメージで、人が生きていくために必要なものと多く結びついている赤のイメージはヒジュでした。この色のイメージで、3人の未来が見えてきたドラマでした。

このドラマにも『恨みの文化』の国民性が……

韓国というと、自分の身に何かとてつもない不幸や困難が起こると、誰かを責め恨む言動や行動が非常に多くみられると感じていました。「反日感情」にもそれを色濃く感じますが。
恨むべき相手に対して、憎み叩くだけではなく、不遇な境遇を嘆き悲しむことで、苦しみや劣等感から解き放たれたいという願望も含まれているような気がする。ヘウォンの言動や行動にそれを感ずる。だから彼女は自殺未遂を繰り返した。ヒジュの娘の自虐好意もそうでしょう。

全編通して陰気さが満ちていました……

ストーリー展開としてはシンプルだったので、余計に陰気さだけが目立ってしまったように思う。妻の不倫によって起きた家族のそれぞれの感情のもつれと、不倫相手の男の女のクレイジーさが陰湿で異様で暗かったという事です。意外に、飽きもせずに淡々と、4人の痴情のもつれを視聴できました。

とにかくヘウォンの陰気さが、全てを覆い尽くしていた。
ウジェへの未練から、ヒジュへの恨み妬みを増長させていくヘウォン。でもヘウォンは、ヒジュを破滅させることができると確信していたのか?

ヒジュは強い女で、赤のエネルギーの女だった。それに比べてウジェは黒でついに抹殺されてしまった。でもその事で彼はずっとヒジュに付き纏うことができる? ヘウォンも結局は、黄色、緑、黒へと落ちていったように感ずる。

問題の男ウジェ、そんなに魅力あるのかしら? ただの無謀で強引なナルシストのように見えた。相手の事を考えて行動するのではなく、自分の感情を相手に押し付ける男。ただ女を口説くテクニックだけは天性の物として持っている男。

ネトフリの解説にもあったヒジュは、欲望のままにウジェに走ってしまったと書いてあったけれど、個人的には、生きるために必要な欲望であって、男が欲しいというような欲望とはちょっと違う気がした。
だから、ウジェは、あの様に必要にヒジュを追い回した気がする。男は愛があったけれど、女は生きていくための糧だった。


ヒジュの息子ホスの父親が、夫で良かった….というヒジュの言葉、産んだ当時は、どちらの子かよりも、自分の子供として母親として生まれる子供に愛を注いだように思っている。つまり自分の子供だったのだ。ヒジュの娘や息子に対する愛情は、自分には与えられなかった愛情を注ぎ込んでいる。だから、あのような娘や息子の絵や家族を描いていたのだと思う。
娘が、いろいろな勘違いもあってウジェの首を、母を助けるために刺してしまったが、後始末した母の気持ちは、娘を助けることと、家族を守る事でした。

ウジェをどうにかして追い払いたかったヒジュ、過去には戻りたくなかったのだ。ヒジュは、あのアイルランドから、息子を連れてウジェから逃げたのだった。そして夫のもとに何食わぬ顔をして戻ったのだった。そんな妻を受け入れた夫。ヒジュは、生きるために夫のもとへ戻ったのだ。

でも、あんな状態で隠れて生活出来るのですかね? 韓国って住民登録番号という識別番号がなければ、働けないのでは? 夫は、わかっていて見逃しているのでしょうか?

ウジェが「純粋な心を持つ人に鐘の音が聞こえる」というギル湖の伝説…..あの音です。あのエンディング、ヒジュらしいな〜と。「私の物語は終わり」と言い、「私には幸せになる権利がある」「ここはまだ地獄じゃない」とまで言えるたくましさ……

あの鐘の音を聞こえたという表情をして贖罪ができたと感じる傲慢さを感じさせるクレイジーさ。でもそこが凄かった。ヒジュが、コ・ヒョンジョンだったからこのドラマを視聴できたと思う。

恨み妬みが渦巻いているけれど、絶望感を感じなかった。登場人物のクレイジーさだけが目立ち、ヒジュが、ヘウォンの行動や言葉に振り回されていても、どこか彼女には決して負けないような生きる強さを感じたからかもしれない。コ・ヒョンジョンさんの女優の風格が、そのように感じさせたのかもしれない。

へウォンが、ヒジュへの復讐をますます加速させる中で、彼女自身がそんな自分の負の感情で、どん底に落ちる事を冷静に感じているところです。ヒジュからどんな「許し」があれば、納得できるのかも分からずにただただ突き進むしかなかったヘウォンの感情をこれでもかと見せつけたドラマでした。でもあの感情を処理できるのは自分自身ですが。
ヒジュが家族も地位も何もかもを手放して永遠に檻の中に入ると誓かったこと、それによって、自分と同じ立場になる「許し」を得られたからと言ってヘウォンに何が残ったのでしょうか。達成感はあったのでしょうか?

周りの方々……..

「結婚作詞、離婚作曲」とは違ったけれど、あのヒジュの義母は、同じようなキャラでした。自分勝手で、高飛車にしか言葉を言えない女性でした。恨み妬みで、どうしようもないヘウォンの気持ちのはけ口になった定食屋のおっさんや、ヒジュの理学療法士のソヌなども登場しましたが、結局どこにも吐き出されないままに……定食屋のおっさんは、ヘウォンの母が関わる詐欺事件で妻が騙されて死んでしまっていた。ヘウォンのようになぜ騙した相手を恨まなかったのか。恨んでも何も変わらない、自分が惨めになるだけだと分かっているからでしょう。

ソヌに付きまとっていた元親友の母親に告げた「その子はそれを願う人だったのか」という問いかけの言葉、その母親は、ソヌに息子を交通事故で奪われたことに復讐するために、どうしてもその感情を整理できずにソヌにつきまとっていたのです。ヘウォンは、その母親に自分自身を、「自分に似た人」だとわかっていました。その人にはこんな言葉をかけているのに、ヘウォン自身は、ヒジュに対して復讐をやめられないのに。

義姉ミンソは、ヒジュと揉み合って建物から転落した夫のイ弁護士が、右半身麻痺で言語能力の回復が困難な状況で、以前のように彼女にDVを振るうことは二度とできないとわかり、彼を表面上では介護しながら、影では彼を人間的な扱いをしない事で復讐していた。

タイトルの『あなたに似た人』とは、登場した人物の側面があなたにもあるだろうという事を言いたいのかな?

ヘウォンのような恨み妬みの感情を持っている人、ヒジュのように不倫した人、事なかれ主義のヒジュの夫ヒョンソン、自分の感情だけに走った男ウジェ、そしてその結果は、ヘウォンは復讐のために周りの人を巻き込んだ代償を受け、虚しさしか残らなかったし、ヒジュは、家族と優雅な生活、人気作家画家という生活を失なった。ウジェは、ヒジュの娘に息の根を止められたしまったし、ヒョンソンは、大事に守ってきたヒジュを失い、これからは、あの子供らのいく末を案じながら生きていくしかなかった。

そしてこのドラマを観てしまう、優雅な女がどん底に落ちてしまうのを覗き見したい人、復讐に燃えてた女の行動を見たい人、人妻なんて気にせずに、女に走りその女を陥落させてしまう男を見たい、優しい夫をよそ覆いながら、妻の不倫相手を許せない夫の行動を見てみたい…..そういう欲望を持った人が興味を持つドラマだったのか。





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